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ここ数年、美容医療に関するインターネット広告は急増しています。
患者が正しい情報を得て医療機関を選べるようにする一方で、誇大表現による誤解を防ぐことが大きな課題となってきました。
こうした問題に対応するため、2024年3月に医療広告ガイドラインが改めて見直されています。
美容クリニックを含む医療機関は、この新基準を守りながら、利用者に信頼される広告を発信していくことが欠かせません。
本記事では、その中でも特に注意すべき要点を整理して紹介します。
医療広告ガイドラインとは?
医療広告ガイドラインとは、厚生労働省が定める医療機関の広告に関するルールです。
その目的は、利用者に正確な情報を提供し、誤解なく適切に医療機関を選べる環境を整えることにあります。
ガイドラインに違反すると、6ヶ月以下の懲役や30万円以下の罰金を受ける可能性があるほか、違反事例として公表されることで医療機関としての信用を大きく損なう危険もあります。
そのようなリスクを避けるためにも、規定内容を正しく理解し、ガイドラインに沿った広告運用を徹底することが重要です。

医療広告で禁止されている内容
では、実際にどんな表現がNGとされているのでしょうか。主な禁止例を以下にまとめます。
虚偽広告
主な禁止例を以下にまとめます。
例:
×「難しい手術でも必ず成功させます!」「当院の治療は100%安全です!」など、医学上あり得ない表現
×「たった1日ですべての治療が完了!」など、実態と異なる表現
×「患者様満足度99.9%!」「当院の手術の成功率は98.5%!」など、データの根拠を明確にしない満足度や治療効果の表記
など
誇大広告
医療広告ガイドラインを遵守している旨の広告や、施設や提供する医療の内容等について誤認させる広告、処方箋医薬品等を必ず受け取れると期待させる広告、科学的根拠が乏しい情報による誘導、「かかりつけ歯科機能強化型歯科診療所」等について誤認させる広告、データの内訳が示されていない手術件数などが該当します。
例:
×「〇〇インプラントセンター」「××歯科〇〇インプラントセンター」など、医療機関の名称として、あるいは医療機関の名称と併記する形で「〇〇センター」と記載
×「患者様に最適な医療を提供します」「最先端の医療機器を使用した治療が可能」など、特定の治療法・医療機器等が最適・最先端である旨の記載
など
比較優良広告
最上級の表現や他院と比較して優れていると断言する表現や、著名人を利用した広告は違反対象です。
例:
×「最高の医療を提供いたします」「県内で一番の医師数を誇ります!」「日本一の実績を誇ります」など、最上級の表現、その他優秀性について著しく誤認を与える表現
×「〇〇クリニック様よりも低価格でサービスを提供します!」など、特定の他の医療機関と比較して優良である旨の記載
×「当院は他のクリニックと比較して、脂肪吸引術の成功率が高いです」など、不特定の他の医療機関と比較して優良である旨の記載
×「他院では質の低い医療を提供しており、非常に危険です」など、不特定の他の医療機関を誹謗することで、自院の医療が優良である旨の記載
×「モデル〇〇さんも通院しています!」など、著名人が患者である旨の記載
体験談の掲載
治療効果に関する体験談は、個人の主観で誤解を生むため禁止されています。口コミ転載、スタッフの体験談、加工したアンケートの掲載などもすべてNGです。
ビフォーアフター写真
医療広告ガイドラインでは、治療等の効果または内容について、見る人に誤認を与えるおそれがある写真等の掲載は不可です。
ただし、以下の詳細な説明を付記することにより、ビフォーアフター写真の掲載は可能です。
・術前または術後の写真に通常必要とされる治療内容
・治療期間・回数
・費用等に関する事項(※自由診療or保険診療なども含む)
・治療等の主なリスク、副作用等に関する事項

その他、医療広告ガイドラインでは自由診療等についても細かくルールが定められています。
2024年3月の改正ポイント
今回の改訂で新たに追加された注目点は以下の2つです。
- GLP-1を含む自由診療に関する広告
- SNSや動画における広告
GLP-1を含む自由診療に関する広告
GLP-1は糖尿病治療薬ですが、ダイエット効果を期待して美容医療分野でも利用が広がっています。
今回のガイドライン改訂では、GLP-1を含む自由診療に関する広告規制が追加されました。
GLP-1は、承認医薬品等(医薬品・ 医療機器等)の中でも「承認とは異なる目的での使用」となるため、広告をする際には「未承認医薬品等であること」等の記載が必要となります。
具体的には、以下の項目を明記する必要があります。
- 未承認医薬品等であること
- 入手経路等
- 国内の承認医薬品等の有無
- 諸外国における安全性等に係る情報(承認国がないなど、情報が不足している場合は、重大なリスクが明らかになっていない可能性がある旨)
- 医薬品副作用被害救済制度の対象にはならないこと
一番のポイントは、「未承認医薬品等は医薬品副作用被害救済制度等の救済の対象にはならないこと」を明記する方針が新たに示されたことです。
今後、自由診療の広告について上記5項目の表記がない場合は、「ガイドライン違反」となってしまうため注意が必要です。

SNS・動画広告の新ルール
SNSや動画広告の市場は急拡大しており、医療分野でも活用が増えています。
今回の改訂では、それらにも明確な規制が設けられました。
特にインターネット広告の伸び率には目を見張るものがあり、その中でもビデオ(動画)広告は前年比115.9%の6,860億円(構成比25.5%)となっています。
これは、広告種別の中で最も高い成長率です。

「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費詳細分析」より引用
また、ソーシャルメディア上で展開されるソーシャル広告市場は、前年比113.3%の9,735億円に拡大し、インターネット広告媒体費の36.2%を占める結果になっています。
前年から右肩上がり(+1.5%)で成長しており、その重要性がますます高まっています。

「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」より引用
ソーシャル広告を種類別にみると、SNS系が4,070億円(構成比41.8%)、動画共有系が3,372億円(構成比34.6%)となり、この2つで全体の76.4%を占めています。
このことから、ユーザーのエンゲージメント率が高い(=ユーザーが積極的に投稿や閲覧をしている)SNSや動画共有サービスが、広告主にとって魅力的なプラットフォームになっていることがうかがえます。

「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」より引用
インターネット広告媒体費は2024年も着実に拡大し、前年比108.4%の2兆9,124億円になると予測されています。
このようなインターネット広告市場の動きに呼応して、医療広告ガイドラインにも「SNS・動画における事例」が新たに設けられました。
今後、SNSや動画で医療広告を展開する際は、具体的に以下の対応が必要となります。
【広告が禁止される事項】
SNSや動画広告にも、これまでとほぼ同様の禁止事項が適用されます。
広告が禁止される事項が、以下のいずれかに含まれている場合はガイドライン違反となるので注意してください。
SNSの場合…「プロフィール」「投稿」「返信」
動画の場合…「動画」「タイトル」「概要欄」
●禁止事項の例
- 虚偽広告
- 誇大広告
- 比較優良広告
など
なお、治療内容または効果に関する体験談も、ホームページ同様SNSや動画でもNGとなります。
また、医療機関が自院のサービス等の体験談を紹介するために他者の投稿を引用する行為も違反となるので注意してください。
【自由診療に関する限定解除要件】
自由診療は、一部の例外を除いて広告可能事項には該当しないため、原則として広告することはできません。
ただし、広告可能事項の限定解除要件を満たし、かつ禁止される広告に該当しない場合は広告可能となります。
その際は、以下のいずれかで、限定解除要件となる次の情報を掲載することが必要となります。
SNSの場合…「プロフィール」「投稿」「返信」
動画の場合…「動画」「タイトル」「概要欄」
●掲載が必要な情報
• 治療等の内容及び費用
• 治療等の主なリスク・副作用
なお、上記の情報をリンク先で表示させる方法はNGとなる点にも注意が必要です。
【ビフォーアフター写真】
以下のいずれかで、画像の付近に次の情報提供がなされていなければガイドライン違反となります。
SNSの場合…「プロフィール」「投稿」「返信」
動画の場合…「動画」「タイトル」「概要欄」
●掲載が必要な情報
• 治療等の内容及び費用
• 治療等の主なリスク・副作用
こちらも「自由診療に関する限定解除要件」と同様、上記の情報をリンク先で表示させる方法は認められてません。
最後に
医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第4版)では、上記のポイント以外にも、美容医療広告に関する様々な事例が解説されています。
美容医療に関する広告を行う場合は、必ずこの解説書を参照し、法令に抵触しない広告表現を心がけてください。
参考資料:医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第4版) (厚生労働省)
Herマーケティング
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